A Translator's Rumblings

読書日記もあり

書評:People of the Rainforest: The Villas Boas Brothers, Explorers and Humanitarians of the Amazon

People of the Rainforest: The Villas Boas Brothers, Explorers and Humanitarians of the Amazon by John Hemming. ISBN: 9781787381957 • 288pp

TLSかLiterary Reviewあたりで書評を読んだのをきっかけに、この本を衝動買いした。この出版社 (Hurst Publishers) の本を何冊か読んだことがあり、学術的なものが多いので、おそらく人類学的な本なのだろうと予想していたが、まったくそんなことはなく、面白くて寝る間も惜しんで読んでしまった。ちなみに私はこの分野のことは知らないまったくの素人である。

この本は、ヴィラス・ボアス三兄弟の数々の探検やシングー川流域の先住民族との初の接触、その後の先住民族の文化と生活環境を保護するための活躍を非常に面白く描いており、まるで冒険の物語を読んでいるような感覚だった。同時に、「文明人」がもたらし先住民族がまったく免疫を持たない疫病の脅威、我々の「文明」観を覆す先住民族の文化やものの見方、ヴィラス・ボアス兄弟によるシングー公園の設立経緯など、教えられることばかりだった。特に、先住民は子どもをまったく叱らない、子どもが火遊びをして何世帯もが共同で住む住居が焼失してしまったのに、それを笑い飛ばして皆がすぐに協力して建て直す話など、驚愕した。

著者にはこの兄弟と親交があったため、逸話や兄弟の性格などの伝記的情報に富み、自身がアマゾンの専門家でもあることから、アマゾンに関する記述にも説得力がある。その点、ジャーナリストなどが書く本と違って信頼できると感じた。

一気に読了してしまい、まったく無知の自分がこの本に出会えて良かったと幸福になったが、一方の読後感として、シングー川流域の先住民族の生活を脅かすベロ・モンテ水力発電ダム群は現在どうなっているのだろう、ボルソナロ大統領政権下でのアマゾンの環境破壊は?コロナウイルスの影響はどうなっているのだろうなどと、気になることもたくさんである。

一つだけ文句を言うなら、この出版社のハウススタイル (?) で活字体が小さいのが残念。